~ 甲子園に行ってきました ~
金足農業高等学校野球部OB・OG会 副会長 長谷川寿
■マスターズ甲子園とは
一言で言うと、「日本一贅沢な草野球大会」です。
今年で20回目を迎え、全国高校野OB連合会には、現在、43都道府県716校が加盟しています。
秋田県は2016年に秋田南高校OBが加盟し、現在は14校まで拡大。
出場枠がある年の秋田予選を勝ち抜くと甲子園へ出場できます。
県勢としては、2021年の能代高校OBが初めて甲子園の土を踏み、山田久志さんがマウンドに立ちました。
■金農マスターズ結成の経緯
OG菅原有紀子(旧姓鈴木)から「マスタズ甲子園行きましょうよ」と相談があり、
2017年2月の嶋崎前監督を囲む会で学校長他、関係者の承認を貰い、産声を上げました。
その時の旗印が「嶋崎監督を(選手で!!) 甲子園へ連れて行こう」でした。
■甲子園予選開催までの裏舞台
甲子園へ行くためには県で8チーム以上の加盟が必要でした。
当時は秋田南高校OBと金足農業高校OBの2校だけで、拡大の為に、
秋田南高校OBの松田さんやボールパーク秋田の藤田さんと協力しながら、2017年に交流戦をスタート。
私は「旧制中学」担当として各校への声掛けや、
マスターズにゆかりの深い角館高校OBの柳葉敏郎さんに始球式をお願いするなど、様々なアプローチをしました。
交流戦から5年で12校が揃い、2021年に念願の甲子園予選を開催できました。
秋田高校OBが8校目に加盟したときは嬉しかったなあ。
■金農マスターズこれまでの戦績
加盟校拡大を目的にした交流戦ですか、最初に秋田南高校に勝って以降、3大会連続で1回戦負け、
2021年の甲子園予選では、社会人経験者や甲子園経験組を招集したものの、優勝した能代高校OBに1回戦負け。
勝ち方を見失い、甲子園は遥か遠くにありました。
■2023年甲子園予選トーナメントの様子
相変わらず人集めに苦労し、特に期待もしてなかった今年の甲子園予選ですが、
1回戦の新屋高校OBに6年振りの勝利で波に乗り、秋田工業高校OB、鷹巣農林高校OBを撃破。
決勝は角館高校OB。甲子園出場にどこよりも想いが強く、大差での敗戦を覚悟しましたが、タイブレークに持ち込み、
3点先制されたものの、最後は劇的なヒットとヘッドスライディングでサヨナラ勝ちを収めました。
■勝ったものの・・・
大会までの3カ月間で、選手の募集、書類の提出、費用の支払いがあり、不安がのしかかってきました。
選手募集は、発足と同時に整備した学年幹事に協力を仰ぎ、OGマネ3名を含めて目標の50名がすぐに集まりました。
大会パンフレット用の帽子とユニホームが無い!と締切りの直前に打ち明けられるなど50名の統側が本当に大変でしたが、
提出物は言い出しっぺの菅原有紀子が完璧な対応をして、また、心配だった参加費50万円と前夜祭の費用はOB・OG会が寄付を募り捻出。
令和2年の夏の大会が中止になった2名を招待してくれるなど、個人負担を最小限にすることができました。
■前夜祭と決起集会で気分は最高潮
大会前日に参加校が集まる前夜祭で、金農マスターズは最多人数36名の参加と、
壇上からは、嶋崎前監督の、この日最長の「意気込みスピーチ」で、他校を圧倒しました。
また、決起集会には金農関係者58名が集まり、金農ここにあり!と帰属意識を高めることができました。
■攻守のシナリオ作り
マスターズ甲子園は1時間半の試合時間で最大50名の出場が可能です。
「若手に譲るよ」と出場をするメンバーもいましたが、来た以上は全員出したいのが親心。
その結果、攻守交替のシナリオ作りが大変で、貢献度の高い選手は長く出したいし、でも、ベテランも出したいし。
当日の朝方になってようやく完成。嶋崎前監督は1番DH。
■当日の集合から入場行進
11月11日6時46分に5号門付近に集合。久しぶりのユニホーム姿に照れと、値れの甲子園球場前にみなさん緊張気味。
一般の人から「金農旋風みてました」と、撮影を求められる選手もいて、誇らしく思いました。
係員に誘導されて、入場門から暗い通路を歩いていくと、前方にはレフトスタンドが広がっています。
徐々に芝生が現れ、電光掲示板を見た瞬間、鳥肌でした。
一旦、スタンドで待機し、各自が笑顔の記念撮影を横目に私は、マグネットボードを見ながら選手交替の復習。
入場行進前に球場外へ移動。そういえば39年前にここで西宮高校のプラカード女子と照れながら皆で写真を撮ったことを思い出しつつ整列。
8時、ファンファーレが鳴り、大会行進曲と「栄冠は君に輝く」は当時と同じ。
現実と過去が交差し、「ふあふあ」した不思議な感覚が広がりました。
佐々木大治さんの遺影を持つ同級生、それぞれが自身の想いを、胸に抱きながらの行進となりました。
■試合前練習からいよいよ夢の舞台へ
11時から、狭い室内練習場で、場所を見つけながらウォーミングアップ。みんな真剣です。
前の試合が終了と同時に球場入りしましたが、シートノックが無いので試合までは、ベンチ前で身体を動かしたり、
ベンチに座って談笑したり、みんないい笑顔でした。
11時50分、審判の号令で整列。 球審のプレイボールとサイレンが鳴り、いよいよ、夢の舞台の始まりです。
応援曲も流れ、ボランティア応援団による声援があり、まさに甲子園。
選手の体形は大きく変わっていますが、気持ちは高校の時と変わらず、フルスイングと全力疾走。
過去に予選で負けた選手、甲子園はベンチだった選手、再びグランドに立った選手。
好プレーあり、エラーあり、暴走あり、ペンチではヤジと笑い声が最後まで途切れず、全員が笑顔で駆け回り、最高に楽しみました。
■同級生を出し忘れ・・・
最終回、自分自身の出場に気が回り、同級生の佐藤俊樹を審判に告げるのを忘れる大失態。
すぐ気が付いてくれて、事なきを得ましたが、選手全員を出し切る私のミッションは先輩のフォローのお陰でやり切ることが出来ました。
■甲子園ロスの中、ふたたび
「マスターズ甲子園に行きましょうよ」で始まった金農マスターズでしたが、
実際の甲子園は、おじさん達を楽しませるために運営のボランティアさんが段取り良く動いてくれて、
試合後、全員にヒーローインタビューの舞台が用意さるなど、おもてなしの精神がいっぱいの素晴らしい大会でした。
試合終了の瞬間に肩の荷がおりましたが、出場メンバーからの喜びの言葉と、後から送られてくる写真の笑顔を見て、
もう1回行きたいなあと、思い始めた今日この頃。39年前同様、沢山の宝物を頂いたマスターズ甲子園でした。