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~ 甲子園に行ってきました ~

能代高等学校硬式野球部松陵会
元能代高硬式野球部監督 現大曲高教頭 伊藤康夫

 マスターズ甲子園の紹介 

 全国高校野球OBクラブ連合に、秋田南高校が平成27年度に、金足農業が平成28年度に加盟し、平成29年11月にこの2校で第1回の秋田県OB野球交流大会が開催された。令和元年に加盟校が8校以上となったことで、全国高校野球OBクラブ連合が新規加盟県として、令和2年に開催されるマスターズ甲子園への出場枠を秋田県に与えることが承認された。しかし令和2年のマスターズ甲子園はコロナ感染拡大のため中止となり秋田県の出場枠は持ち越しとなり、令和3年秋田支部予選を勝ち抜いた能代高校OB会が秋田県から初めての代表校となった。現在県内の加盟校数は12校。
 
全国高校野球OBクラブ連合
  https://www.masterskoshien.com/zenkoku_ob/main.html
マスターズ甲子園オフィシャルサイト
  https://www.masterskoshien.com/index.html
         42都道府県697校(2021年11月15日現在)
☆秋田支部(事務局は秋田南高校野球部OB会)
  http://kanano-baseball.com/mca/
またはボールパーク秋田HPで随時紹介。

●秋田県大会~初出場までの準備

 秋田支部予選翌日の地元紙「北羽新報」でたくさんの紙面を使って取り上げて頂いたおかげで、優勝したこと、甲子園に行くことをたくさんの方々が知ることなり、「おめでとう!甲子園でも頑張って」などと声をかけてもらった。秋田支部予選前は、優勝しても秋田県選抜チームでの出場を検討していたが、たくさんの祝福に応えたい気持ちが次第に強くなり、『能代高校OB会』として出場することを決断した。
 甲子園に行って秋田に無事帰れば『楽しかった』とみんな思うのは容易に想像できたが、9月や10月の全国、秋田県内のコロナ感染者数が非常に多く、関西に行けるのか、参加者は集まるのか、出場費・用具費・PCR検査代等の費用はどうなるのかと、課題も不安は数多くあった。結果的に12月はコロナの感染状況が落ち着き、費用面も何とか工面して頂き出場に支障がなく準備が整い、大会を有意義に終えることができた。ただ選手登録の締め切りが10月末日であり、その時点でそれぞれの職場等で県外に出たあとの行動制限等の制約があり出場を断念した選手も多くいたことも確かである。ちなみに選手は秋田県内、札幌、関東、愛知、兵庫、奈良、岡山から集結した。甲子園までの移動費や宿泊費は各自負担で、現地集合、現地解散とした。

●大会前日の代表者会議

 選手の大半が夜の街でお食事を楽しんでいる頃、ホテルヒューイット甲子園で代表者会議が開催され、代表者の私と主将登録をした村岡啓太が参加した。当日の動きやルール等の説明があった。今大会の登録選手の中で一番華のある選手は本校OBの山田久志さん。山田さんに先発をして頂き試合を開始するためには後攻を取らなければいけなかったり(綺麗なマウンドで登板してもらうため)、ルール上投手は打者1人を完了させなければいけないのだが、1球で投手交代してもいいように実行委員長(長ヶ原誠 全国高校野球OBクラブ連合理事長)にお願いしたりと気が抜けない会議であった。

●大会当日の日程
12月4日(土)大会1日目
7時30分~7時55分
開会式・入場行進
8時15分~8時45分
3塁側室内練習場にてアップ
8時45分~9時35分
記念写真撮影、球場入り
9時45分~11時15分
第2試合(試合時間90分)
※1日5試合 奈良県代表 御所実業OB 6対12(7回で90分経過)
11時15分~11時45分
記念写真撮影、球場入マスコミ対応



☆ 開会式 ~行進はマネージャーも一緒~  

 大会本部が指定する集合時間は6時20分に一塁側にある2号門。ここで誓約書と健康管理シートを背番号順にそろえて本部に提出だが、夜明け前なので暗い中の作業だが、若手が気を利かせ携帯で照らして提出物の確認をしてくれた。
 プラカードを持つのは市立西宮高校OG。能代高校が高松直志投手を擁して出場した第60回大会に行進されたとのこと。計算すれば年齢はわかるが非常に気さくな元女子高校生だった。村岡啓太主将が優勝旗を、最年少の伊藤健友が優勝杯、そして代表者の私を先頭に行進。グラウンド内から見る初めての甲子園、土の感触、こういう景色だったのかと感動した。球場に入る時は、一歩目、二歩目と踏みしめるようにグラウンドに入った。開会式はわずか30分足らずだが、甲子園を目指していた若い時を回想できた時間であった。
 コロナ禍以前の開会式はユニフォームを着ていれば、家族の行進も可能であった。今回はマネージャーの小野美咲(旧姓牧野)は、夫である小野博史のユニフォームを着用し行進をした。

   


☆ プロ野球通算284勝世界一のアンダースロー投手 VS 最高齢登録者86歳  

 今大会の一番注目の登録選手は能代高校OB会の山田久志さん。
 主な経歴は、阪急ブレーブスのエースとしてプロ野球通算284勝、MVP3度、最多勝3回、ベストナイン5回など数多くの栄光を受賞した史上最高のアンダースロー投手。指導者としても中日ドラゴンズ監督を務め、2009年に優勝したWBC日本代表投手コーチなどの実績がある大先輩である。
 試合は35歳未満が3回まで(ヤング)、それ以降は35歳以上(オールド)がルール。山田さんには試合開始から1球を投げて頂き、本来のヤングチームに選手交代予定であった。山田投手の女房役には金谷久弥松陵会会長。この1試合で参加した全員が何らかの形で試合に出場し、自分の名前をスコアボードに刻むことができた。またアナウンスで名前をよばれる瞬間は鳥肌ものだった。
 山田さんの先発は御所実業武村監督には事前に電話連絡をしていたが、御所実業からは今大会登録選手の中で最高年齢の86歳がいるので、ぜひ打席に立たせたいとのことで実現した。報道機関、大会事務局が最も注目することになった。  プレイボールとともにサイレン。1球のみの特別な時間。ボールはアウトコースのボール球。最高齢の高橋さんはスイングせず。審判はボールの判定となり一同『シナリオと違う』と…
 金谷捕手は山田投手に返球。最高齢の高橋さんは打席でまた構える。その状況を察した山田投手は振りかぶり2球目を投じる。結局三振を取るまで投げて頂いた。YouTubeでそのシーンを見られます。サードの田口の動きが面白いのでぜひ見て頂きたい。山田久志さんが三振を取り、先発メンバーが全員交代となり、ヤングチームの出場となったが、この企画は大成功であり、山田久志先輩も大変喜んでくれていた。



☆ 2回裏攻撃前には甲子園に校歌が ~『奮え松陵我が健児』~  

 山田久志さんのコメントが新聞やネットに掲載されていたが、「母校のユニフォームを着て、(高校)現役のときに甲子園で投げたかったなとは思うよね。でも楽しかったです。なにより2回裏に歌った校歌がよかった。何年経ってもちゃんと覚えていて、自然と出てくるものだね」。 写真は校歌が流れたときのベンチ内の様子。誰が声をかけたわけではないが座っていた選手は自然に立ち上がった。ベンチ内では篠田明さん(写真一番手前)が直立して大きな声で歌っていた。
 校歌は、創立80周年の記念式典で配付したものである。当時の1年生が歌っていたものなのでアルプス席に生徒がいるように感じ感動した。ちなみに、この2回裏の校歌はYouTubeで何度も見直した。



☆ オーダー表の作成 ~自分がどのタイミングから出場するのかは事前把握済み~  

 今大会は大会要項から出欠確認、ガイドライン等々すべての参加者に周知するためのツールとしてラインでグループを組み連絡しました。オーダー表も事前に選手に送信した。
 選手交代は、審判員でなくベンチスタッフに伝えるとインカムで放送席に伝える。また名前を書いたマグネットシートを貼り付けたホワイトボードを準備して采配ミスがないようにしてくれた。たくさんの選手をもれなく出場させるために、オーダーは事前に組み、選手に周知することは大変重要なことであった。

☆ オリックスブルーウェーブ高橋功一投手  

 1995年リーグ優勝に貢献し、日本シリーズ第5戦に先発した実績を持つ元オリックス・ブレーブス投手だ。現在は東加古川レッドアローズ(ヤングリーグ)の監督をしており、年末に帰省したときには三種町で野球教室を開催している。今現在もビシッとしたボールが投げられる。高橋投手にたくさん投げてもらえば負けなくてすんだが、投げさせなければいけない50歳代投手がいたので高橋投手には1イニングのみを託した。




☆ 満塁ホームラン兒玉大介選手  

 予選では柵越えのホームラン二本を含む、打てば長打の兒玉大介選手。甲子園でも素晴らしい打球を放ち、走力を生かし満塁ランニングホームランを達成。守りも堅実で間違いなく能代高校OB会の中心選手として県大会同様甲子園でも大活躍した。



☆ ヤングの代表者であり、チームの主将村岡啓太

 高校時代、主将を務めた村岡啓太選手。今大会は主将として登録したのは、これまで県内で開催されたマスターズ甲子園秋田支部予選や交流試合すべてに参加している選手だからである。高校時代の2年秋は東北大会で菊池雄星を擁する花巻東に、3年夏は二木投手を擁する明桜に敗れ甲子園出場はならなかった。それだけに今回は甲子園で、主将として優勝旗を持って行進し、投手として、内野手として、主軸としてのプレーは格別な思いであっただろうと想像する。村岡主将に限らず、参加したすべての選手が一球一打一瞬に感動した大会であった。

      


☆ 最後の打者は金谷久弥会長  ~マスターズ甲子園出場でOB会の親睦を深めることに~ 

 今回に出場するためにいろいろとご尽力を頂いた金谷会長には大感謝である。初回は、山田久志さんの捕手を務めた金谷会長が、最終回となった7回二死から相原選手が執念の四球でつないでくれ、2死満塁で金谷会長が代打で出場した。フルカウントから三振し試合はゲームセットとなったが、甲子園で野球ができたことにチームのみんなが会長に感謝する瞬間でもあった。「松陵会」会則第2条に「会員相互の親睦を図ることを目的とする。」という一文がある。マスターズ甲子園に出場し、いろいろな世代の方々が交流することになったことがきっかけで、今年度松陵会の新年会参加者予定者はかなり増加した。特に新規参加者が多かったことから、マスターズ甲子園がOBの親睦を図ることにつながったといえる。金谷会長がその職責を果たしOB会が活性化したことは会員一同本当にありがたいことで、今後現役選手への支援の輪も大きくなるだろう。
 甲子園から戻って2週間後に金谷会長の音頭で、「親睦会」を開催したが、「また甲子園に行きたい」とメンバー全員が口をそろえた。松陵会新年会はコロナ感染拡大のため中止を余儀なくされたが、会員同士のつながりは確実に強くなった。能代高校硬式野球部松陵会は、マスターズ甲子園2021大会への出場は期待以上の効果が感じられ大成功であった。