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~ 私が実践した野球への取り組み方 ~

 
桜庭 仁(HITOSHI SAKURABA)

















Profile
 昭和35年6月東京都大田区生まれ
 横浜市金沢区立金沢小学校
 八郎潟町立八郎潟中学校
 秋田市立秋田商業高校
 秋田相互銀行(のちの秋田あけぼの銀行、現北都銀行)
 
社会人野球での球歴
 ●JABA全国大会10回出場
 ・都市対抗野球
   秋田相互銀行 2回(昭和57年、昭和61年)
   補強選手(ヨークベニマル)3回
       (昭和62年、平成元年、平成2年)
   補強選手(NTT東北) 1回(昭和63年)
   補強選手(JT)   1回(平成3年)
 ・社会人野球日本選手権
   秋田相互銀行 2回(昭和56年、昭和62年)
 ・全日本クラブ選手権
   秋田ベースボールクラブ 1回(平成9年)

◎はじめに
 小さい頃は、家にランドセルを置くとすぐに学校に戻りボール遊びをし、土日はソフトボールチームでの練習や試合、家ではテレビでプロ野球や高校野球中継を楽しむ、どこにでもいる「野球小僧」でした。
 その「野球小僧」が、いつか自分も「プロ野球」に進みたいと大きな夢を持つようになりました。残念ながら目標であるプロ野球選手になることはできませんでしたが、社会人野球では結果を残すことができました。その中で実践してきた「野球への取り組み方」を紹介したいと思います。
 今回寄稿した内容が、野球に携わる全ての方々に参考にしていただき、少しでもお役に立つことができれば大変ありがたいです。
◎野球の心得
 野球を通じた上司、先輩、同僚、その他野球関係者との出会いで、厳しい叱咤激励や指導が、私の人格形成に大きく関わったと思います。
 先輩、後輩との上下関係に馴れ合いはありません。先輩、監督、コーチはもちろんのこと、目上の人への挨拶を欠かさず、尊敬の念をもって接することが大事です。周りの人には「目配り」「気配り」「思いやり」の気持ちで臨むことが必要です。言葉づかいは、当然ため口はもってのほか、むやみやたらに話しかけることはできませんでした。それだけ上下関係がはっきりしていました。
 身の回りの整理整頓は、特に厳しく指導されました。部室の掃除、ロッカーの整理、靴の並べ方、グラウンドや室内練習場のごみや石ころを拾う、ボールの放置をしない等、これらが出来ていない学校は、強豪校になり得ないと思います。
 野球道具は「自分の分身」です。いかに大切に扱うか、私はグラブ、スパイク、バットを毎日磨いたものです。グラウンド整備もそうです。エラーしたことをグラウンドのせいにしたくありません。グラウンドも「自分の分身」だと思い、常に自分自身の最大限のパフォーマンスを発揮できるように整備をしていました。
◎準備運動
 準備運動はスポーツ科学の進歩により、時代とともに変化しています。私の時代はうさぎ跳び、個人ノック、長距離走、お尻の皮がこすれ血が出るまでの腹筋運動など、過度なトレーニングが良いと思い当時は行っていました。また、水泳など肩を冷やすことも禁止でした。その頃は当たり前のことと思い実践していました。現在では肩や肘のアイシングも推奨されています。
社会人になり、専門の指導者の監修のもと、ウエイトトレーニングを取り入れたことで体幹が鍛えられ、スピードとパワーがさらに増しました。
ストレッチも素晴らしい準備運動です。ゆっくりと呼吸をしながら行うことで、血中に酸素を取り入れ、身体をほぐし、ケガの予防につながると思います。
◎基礎
 キャッチボールはあぐらをかき、肘は肩より上に、頭の上から投げるようにします。次に立ち上がり、両足を肩幅よりやや広く、両肩と平行にしたまま、上半身はあぐらの時と同様に行います。そのあとに塁間の距離をとり、投げ手と逆の肩を相手に向け、胸をめがけて投げるようにします。捕球の際にはフットワークを使い、正面に入り胸の位置で捕るようにします。
 トスバッティングは打者1人、野手2人(または1人)で行います。これは基礎中の基礎で、打つ・投げる・守るが一つのセクションで出来ると思います。打者は相手に正確に打ち返すために、しっかり最後までボールを見るようになり、バットコントロールと集中力が身につきます。野手は相手の打ちやすいように投げると、コントロールが良くなります。ちなみに、高校時代の夏休みの練習では、午前中いっぱいトスバッティングを行いました。それが私の財産となり、「ノンプロ」での活躍に繋がったように思います。
◎打撃
 テークバック時の上半身は、投手側の肩に顎をつけるイメージでいいと思います。スイング後は逆の肩に顎をつけるイメージです。身体の使い方は、私の中ではキャッチボールもバッティングも共通したイメージです。下半身は、テークバックから踏み出し時、開きを抑えるために、身体の中心はそのままで投手に対してお尻をぶつけていくイメージです。開きを抑えることにより、ボールをインパクトまで長く見ることができると思います。
 インパクトは、右打者であれば左手の甲でボールを打つイメージです。または、右の掌で打つイメージをしてください。そうすれば、肘が上がることは物理的にあり得ません。私は、新聞紙を丸めて手の甲打ち、または掌打ちをしていました。
 タイミングの捉え方は、まずネクストバッターズサークル時、ベンチにいる時、投球練習や対打者の時に、球種やスピード感を観察しました。  ちなみに、ツーボール、スリーボール時はバントの構えなどで投手を牽制することなく、ストライクを取りにくるコース等、狙い球をしっかりと見極めて打ちに行きます。追い込まれると対応が難しくなるからです。
 スイング練習では、最初に外角、真ん中、内角と振り、外角は特に念入りに行いました。上から叩き腰をぶつけるような感覚で、逆方向へ強い打球を打つイメージで行いました。流し打ちをイメージすると、ヘッドが下がり強い打球が打てないと思います。外角のスイングを掴んだ後は、他のコースのスイングは楽に振れるようになりました。
 バントは、バッターボックスの前方に立ちます。これは、フェアラインより前で行うことにより、フェアゾーンに転がる確率が高くなるからです。バットは平行に持ち、ストライクゾーンの高めに合わせます。ストライクバントなら、それより高めに来た投球はボールなので見逃します。コースの振り分けは、平行に持ったバットを転がしたいコースに向けます。バットの先端を握る手は後方の手より強めに握ります。これは、投球に押し負けないようにするためです。高低に対する対応は、バットを動かさず平行に持ったまま、膝の上下で調整します。けっして投球を迎えに行かず、そのままの姿勢で待つことです。  バッターボックスの位置は、左投手対策として、クロスファイヤーを投げづらくさせるためと、アウトコースのシンカー等変化球の対応を含め、前部ホームベース寄りに立ちます。右投手対策としては、変化球が多い場合は曲がりきる前に捉えたいため、前部ベース寄りで立ちます。また、ストレートが速い場合は後部ベース寄りでバットを少し短く持ち、コンパクトに対処していました。
◎走塁
 私は一塁ベースを早く駆け抜けるために、本来のベースの3歩先がベースだと想定し駆け抜けていました。ベースを踏む位置は、一塁手との距離をとり、接触を避けるために手前角の右側を踏むようにしていました。また、ベースの中央を踏むと滑るリスクが高まります。ケガに結び付きやすいので、十分注意していました。
 ベースランニングのコツとしては、塁をまわり次塁へ向かう時のベース前で膨らみ左角を踏み、その場で次塁へ真っすぐ向くように腰を切るイメージです。そうすることで無駄な膨らみがつかず、素早く向かうことが出来ます。
 牽制球で帰塁する際は、ボールのつく時間と一塁手とのタッチの距離を取るために、左側の角に帰塁します。
◎守備
 まずは守備位置とスタートです。通常はオーソドックスでよいのですが、癖のある打者の時は、投手の球種、コースも鑑み、守備位置を変えていました。一番重要なのは、一歩目のスタートです。投球がバットに当たった瞬間よりも少し早めに動き出すイメージで取り組んできました。
 グラブを差し出し捕る位置ですが、右利きであれば身体の正面の左足に近い位置でボールを捕ります。なぜかというと、フロントステップをして素早く投げるために、右肩にグラブを運びやすくなり、スローイングがスムーズに出来るからです。
 グラブの出し方と捕り方ですが、グラブは広げながら立てて、下から出すように前で捌きます。目でボールを追うのではなく、額でボールを追うイメージで捕ります。そうすることで、自然に腰は下がり前捌きが容易に出来ます。目でボールを追うと、少し腰高になり両足が揃い、トンネルしやすくなるからです。さらに、前捌きをして捕球した際に手首を少し内側に捻ります。それによりボールの回転を止めることに繋がり、確実な捕球とジャッグルを防止することが出来ました。
 私は毎日のように、グラブを立て下につけ、ショートバウンドさせたボールをグラブで掴み、素早く右手で取り出し、送球する姿勢までを反復練習しました。

◎野球選手を志す皆様へ
 以下の5項目を参考にしていただければと思います。
 ①野球ができる環境、家族など周りの方々に感謝しましょう。
 ②「基本なくして応用なし」最初から素晴らしいプレーを出来るはずはありません。成長は正しい基本練習の反復です。
 ③人の話に耳を傾ける素直な心を持ち続けてください。指導者、諸先輩、家族や仲間の話を聞き、その中から自分に何があっているか考え、判断してください。
 ④ケガや故障をしたら休む勇気が必要です。試合に出たい気持ちはわかります。私も肩や腰、足首、肉離れなど数々のケガに悩まされました。先を見据えて無理せず、しっかりと治してから復帰して、60歳を過ぎた今でも白球を追いかけることができています。周りに左右されず、将来の自分を考えて決断してください。
 ⑤レベルの高い野球を生で観戦しましょう。野球場に足を運んで、プロ野球やJABA社会人野球の強豪チームなどの、スピード・パワー・テクニックなど迫力のある素晴らしいプレーを観て、レベルの高さを実感し、今後の練習等に役立ててもらいたいと思います。

◎終わりに
  私は幸いにも大好きな野球中心に人生を歩んできました。皆様もそれぞれの目標を見据えて「感謝」「基本の反復」「素直な心」で、日々の練習等に励んでください。ご健闘をお祈りいたします。