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スポーツ心理学から学ぶ
子供たちの育成・指導


      

― 教え過ぎることなく ―

スポーツ好きの子どもは、とにかく体を動かしたがるものだ。スポーツ指導で用具を持ち込むと、置くや否や勝手に取り出して、はしゃぎながらバットを振ったり、ボールを投げたりする。
それが当たり前のことなんだなーと、子どもに接するたびに感じさせられる。
そんな子どもたちに、中学生や高校生に行うように、微に入り細にわたり指導しても馬耳東風だろう。
もちろん丁寧に教えることは重要だ。
けれども簡潔でなければ、モチベーション(やりたい気持ち)や自主性(考えながらのプレー)がそがれる恐れがある。
子どもたちが嫌々プレーしたり、ダメ出しを気にしながらやるのでは、どんなに理にかなった指導をしても、十分な成果を上げることはできない。





小学生のある「スポーツ教室」で、ティーボールを実施したときのこと。
ティーボールとは「投手のいない野球」であり、バッティングはティー(球座)に乗せたボールを打つ。
このティーを3カ所設定し、フリーバッティングを開始。
バットは長いものと短いものがあるが、どちらを使用するかは各自の自由とした。
打球が直接観覧席(体育館)に入ればホームランと決めていたので、参加者50名のほぼ全員が長い方のバットを使用した。
長いバットは飛距離は出るが、バットコントロールは難しい。
案の定、球座を打ったり、ボールの上端や下端をたたいたりで打ち損じの連続。
2巡目に入ってもなかなか上手にいかない。
そろそろ短いバットの使用を指示しなければ…、と思った途端に快音が響き始めた。
しばらく見とれていると、今度はホームランが連鎖的に続出。そのたびに各打者の表情には、自信とやる気がほとばしった。
教えることは大事だが、考えさせることはもっと大切だと、つくづく感じさせられた。


ノースアジア大名誉教授
伊 藤 護 朗


~ profile ~

伊藤 護朗(いとう ごろう)
秋田経大付高、秋田経法大付高(現 明桜高)の部長、監督として甲子園3回出場
秋田経法大野球部として全日本大学野球選手権大会(神宮)に2回出場
秋田県アマ野球連盟会長を経て2014年4月から秋田県野球協会 会長(現職)
北東北大学野球連盟顧問
ノースアジア大学法学部長、学生部長を歴任
平成8年ノースアジア大学教授就任
著書、論文、学会発表など研究業績多数
秋田市出身 71歳