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スポーツ心理学から学ぶ
子供たちの育成・指導


      

― チームルーティーンで平常心を ―

 試合を特別なものと意識すると、体に余分な力が入り、スムーズな動きができなくなる。
普段通りの力を出すためには、できるだけ練習時通りの所作(しぐさ)をとるようにした方が、成功の可能性が高くなることからルーティーン(儀式:毎回決まって行う所作)が普及浸透してきた。
 ご存じのように大リーガーのイチロー選手は、打席に入るといつもバットを立てて大きく回す動作を行う。
毎回所作を一定にすることで、平常心を保ち、集中力を高めているのではないか。
 ゲン担ぎやプレーするときの癖は、その選手の自然の動作。プレーやゲームの進行に支障がない限り、子どものスポーツでも本人任せでいいと思うが、人それぞれに個性がある。
効果があるからといってくれぐれもルーティーンを押し付けることのないようにしたい。



個人が行うルーティーンに対して、全員で行うのがチームルーティーン。
これはチームワークを高めることにも役立つので、子どものスポーツでも積極的に取り入れてもいいと考える。
 甲子園に出場しているチームを見ていると、各チームとも何らかのルーティーンを行っているのが分かる。
ベンチ前やマウンドに集合し、「肩を組む」「胸に手を当てる」「空を見上げる」など。
同時に言葉をかけ合っていることも多い。気持ちを鼓舞する言葉や冷静になる言葉を唱和しているのだと思う。

 チームルーティーンは、練習や試合前の心理的ウォーミングアップとして行うものと、進行中にこれをやればうまくいく、これをやれば落ち着くといったものに大別できる。
次にそれぞれの例をあげてみることにしよう。

 <事前のチームルーティーン> … 肩を組んで円陣を作り、その状態で
・ 「チームの目標」(「全力疾走・全力発声」など)を唱和
・ 「さっそうとプレーしている自分の姿」をイメージ(15秒)

<進行中のチームルーティーン> … 円陣を作り各自下腹(丹田)に両手を
当て、背筋を伸ばして直立(背筋を伸ばし丹田に力を込めると勇気、元気が湧くといわれる)する。その状態で
・ 「ジ・ドウ・セン」を唱和(「自信を持って堂々と戦う」の頭字の合言葉)
・ 「キ・ガ・ネ」を唱和(「切り替えだ」「我慢だ」「粘るぞ」:上記と同じ)

 二つに区分してルーティーンの項目をあげたが、内容は筆者の私案にすぎないので、適宜適切なものに変えて実施して欲しい。
チーム全員心を一つにすれば、必ずや大きな力が生まれるものと確信している。

ノースアジア大名誉教授
伊 藤 護 朗


~ profile ~

伊藤 護朗(いとう ごろう)
秋田経大付高、秋田経法大付高(現 明桜高)の部長、監督として甲子園3回出場
秋田経法大野球部監督として全日本大学野球選手権大会(神宮)に2回出場
秋田県アマ野球連盟会長を経て2014年4月から秋田県野球協会 会長(現職)
北東北大学野球連盟顧問
ノースアジア大学法学部長、学生部長を歴任
平成8年ノースアジア大学教授就任
著書、論文、学会発表など研究業績多数
秋田市出身 71歳