― 緊張時には細くゆっくり息を吐く ―
チャンス・ピンチを問わず緊張すると、動悸が激しくなったり、頭が真っ白になったりで思うようにプレーできないという選手が多い。 このようなとき、指導者もチームメイトもこぞって「リキむな」「リラックスしろ」「落ち着け」などと励ます。
ところが励まされた選手は、そのようにしようとしてもなかなかできない。むしろ「落ち着かなければ」とプレッシャーがかかって、余計に緊張する場合がある。
そこですすめたいのが、日本古来より行われてきた「丹田呼吸法」という吐く息を中心とした深呼吸だ。
息を吐くだけで副交感神経が自動的に働いて緊張感が和らぐといわれている。
この際のポイントは、下腹(丹田)を引っ込めながら、少し開けた口から細く長く息を吐き、吸うときは下腹を逆にふくらませること。このコツをつかむまでは下腹に両手を当て、引っ込めるときに軽く押すことを繰り返す。下腹を引っ込めながら息を吐き切れば、そのあとは反動的に息が多量に吸い込まれる。
普段からこの呼吸法を訓練し、試合の緊張時に即座に「息を吐く」を実施することができれば、落ち着きを取り戻し冷静になることが期待できよう。
スポーツ緊張とは異なる例えであるが、血圧測定の直前に下腹を引っ込めながら呼気(息を吐く)を行えば、行わない場合より低い数値が表示されることは事実。
人一倍緊張する私は、今でも気持ちが高ぶって眠れないときや人前で話すときの上がりの防止策として深呼吸を実施し、効果を実感している。
深呼吸にはその他にも、心肺機能を高める。ストレスや疲労を軽減する。集中力や記憶力を高める。胃腸の機能を活発にするなど、さまざまな効果があるといわれている。
子どものときから是非深呼吸法を身に付け、心の安定と健康の維持増進に生かして欲しいと思う。
ノースアジア大名誉教授 伊 藤 護 朗
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