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スポーツ心理学から学ぶ
子供たちの育成・指導


      

― 不思議な「フロー」の力 ―

 スポーツを続けている人は「なぜか普段より体がスムーズに動いた」「やることなすことがうまくいった」などという体験をしたことがあるのではないだろうか。
 失敗や負けを数多く経験した筆者であるが、自分でも信じられないぐらい不思議な力が湧き出て、事がうまく運んだという記憶が幾つか残っている。
 この「何もかもうまくいく状態」が、心理学的に説かれる「フロー」や「ゾーン」にあたるのではないか。
フローは流れるという意味。まさしく流れの勢いに乗って力が発現されること。そしてゾーンは、その勢いの域(境地)に達したことと理解されよう。
 野球をはじめ、バレー、バスケット、サッカーなど団体競技では、チームが盛り上がって勢いづくと、それまで不振だった選手までがそのムードに同調し、力を発揮する現象はしばしば見られる。
 「何としても勝ちたい」「絶対いいプレーをする」というような一念にとりつかれると、その欲心や心の緊張から普段の力を発揮できないことが多い。
また、練習時のようにあれこれ考えながらプレーすると、スムーズな体の動きができなくなる。
 欲心や功名心がない無欲、無心の状態のときこそ、最高のプレーが生まれやすいといわれるが、経験上確かなことである。けれども、“ここぞ”というときに、そのような精神状態になろうとしても“言うは易く行うは難し”である。



 そうした場面では、選手が雑念を持つことがないように、指導者が肯定的な短いキーワードやフレーズを考え、それを実行させる「キーワード法」(注意集中)をすすめたい。
 具体的に示すと、
・ ボールをしっかり見ろ! 大丈夫だ。
・ もっとバットを鋭く振れ! きっといい打球になる。
・ 粘り抜け! まだまだいける。
・ 気持ちを切り替えろ! 必ずチャンスが来る。
 こうした文言の中から、その状況(場)に相応しい一つを指示し、選手に復唱させるなどして徹底させる。
 ただし、個人もチームも一体となり、勢いのある流れをつくったからといって必ずしもフロー現象が起こるとは限らない。でもそういう流れがなくしては、最大限に力を発現させる可能性は極めて少ないといえよう。


ノースアジア大名誉教授
伊 藤 護 朗


~ profile ~

伊藤 護朗(いとう ごろう)
秋田経大付高、秋田経法大付高(現 明桜高)の部長、監督として甲子園3回出場
秋田経法大野球部監督として全日本大学野球選手権大会(神宮)に2回出場
秋田県アマ野球連盟会長を経て2014年4月から秋田県野球協会 会長(現職)
北東北大学野球連盟顧問
ノースアジア大学法学部長、学生部長を歴任
平成8年ノースアジア大学教授就任
著書、論文、学会発表など研究業績多数
秋田市出身 71歳