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スポーツ心理学から学ぶ
子供たちの育成・指導


      

― 負けにも失敗にも意味がある  ―

勝つことには、大きな意味がある。
それによって得るものは、「感動」「自信」「満足」「勇気」など計り知れないが、負けにも失敗にもそれなりに大きな意味があることを再確認したいと思う。
負けたり、失敗したりすると、確かに悔しいし挫折感も味わう。
だがそこには、「次に上手くいくためのヒント」が潜在していることも事実であろう。
勝ちに不思議はあるが、「負けに不思議の負けなし」。
この言葉をどのように受け止め対応するかが、その後の成長に大きな影響を及ぼすことになる。  
負けたとき敗因に絡んだ選手は、「送球ミスをしたのは、相手(目標)に向かってしっかり踏み込んで投げなかった」「チャンスに大きい打球を飛ばそうとして、体に力を入れすぎた」などと、大切な何かをつかんだり、感じたりしているはずだ。
けれども負けたことによって、周囲が険悪な雰囲気になっているような状況だと、素直に反省する気になれず、そのことから気持ちを逸らしてしまうことも多いのではないか。



何度も述べてきたように、子どもの成長の速度は一様ではない。
指導者や保護者からすれば、「なぜ、こんな簡単なことができないのか」と、もどかしさを感じることも当然あると思う。それでも子どもを叱りつけたり、「ダメだなー」などと嘆いたりするのは厳禁にしたい。
一流選手が、「あのときの負け(失敗)で目が覚め、今の成功(達成)につながった」と述懐しているのをよく耳にするように、負けたこと自体は決して悪いことでも、意味のないことでもない。
「失敗は成功のもと」の言葉通り、負けや失敗の経験から反省し、次に生かすから成長することができるのではないか。
思惑通りに事を運べないのが、子どもの指導の常。
失敗して当たり前、上手くできなくて当たり前、というような寛大な気持ちを持って指導したいものだ。
このように考えるのは、甘い理想論に過ぎないことだろうか。

 


ノースアジア大名誉教授
伊 藤 護 朗


~ profile ~

伊藤 護朗(いとう ごろう)
秋田経大付高、秋田経法大付高(現 明桜高)の部長、監督として甲子園3回出場
秋田経法大野球部監督として全日本大学野球選手権大会(神宮)に2回出場
秋田県アマ野球連盟会長を経て2014年4月から秋田県野球協会 会長(現職)
北東北大学野球連盟顧問
ノースアジア大学法学部長、学生部長を歴任
平成8年ノースアジア大学教授就任
著書、論文、学会発表など研究業績多数
秋田市出身 71歳