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スポーツ心理学から学ぶ
子供たちの育成・指導


      

― 大きな声は大きな能力の一つ 

中学校や高校の野球では、バッターが打席に入ると「さあーこい!」「おりやー!」「いくぞー!」などと大声を張り上げている光景をよく見かける。
野球以外でも、卓球、テニス、柔道、剣道、砲丸投げ、ハンマー投げなど、雄叫びをあげる種目は枚挙にいとまがない。
なぜ、あんなにでかい声を出すのだろうか。
自己を鼓舞するために気合いをいれていることは理解できるが、余分に体力を消耗するのでは、と心配する人がいることも確かである。
けれども「シャウト効果」といって、極度に大きな筋力を発揮するには、大きな声を出すことが有効な手段であることが科学的に認められている。
この「シャウト効果」とは、大きな声を出すことで瞬間的に筋力が高まる現象のこと。
このことを理解する例としては、火事という差し迫った状況で発揮される「火事場の馬鹿力」や柔道で技の切れ味を鋭くするかけ声(「エイツ」などと発する気合い)などが挙げられよう。
試合が好調に展開しているときは、チームに元気が漲り勢いがある。
逆に不利な状況に陥っているときは、意気消沈し暗いムードになりがちだ。
そんなとき、監督はしばしば「元気を出せ」「声を出せ」と発破をかける。
それに応えて選手が声を出し続けると、不思議にも元気が出るようになっていくことを、多くの指導者が経験しているのではないだろうか。



また、大きな声はプレー中の選手間の連係や伝達にも不可欠だ。野球ではフライ捕球の際の意志表示、カットプレーの指示、アウトカウントの確認など、大声がなくしては成り立たない。
このように、大きな声は大きな能力の一つといえる。ちなみに、声のでかい人は「丈夫で覇気がある」ともいわれる。
プレー能力を高めるためにも、健康を増進する上でも、是非小学生時代から大きな声を出せるよう訓練したいものだ。


ノースアジア大名誉教授
伊 藤 護 朗


~ profile ~

伊藤 護朗(いとう ごろう)
秋田経大付高、秋田経法大付高(現 明桜高)の部長、監督として甲子園3回出場
秋田経法大野球部監督として全日本大学野球選手権大会(神宮)に2回出場
秋田県アマ野球連盟会長を経て2014年4月から秋田県野球協会 会長(現職)
北東北大学野球連盟顧問
ノースアジア大学法学部長、学生部長を歴任
平成8年ノースアジア大学教授就任
著書、論文、学会発表など研究業績多数
秋田市出身 71歳