― 世代間連鎖は師弟関係でも ―
親の持つ特徴(接し方)が、子どもに受け継がれていくことを世代間連鎖とう。
世代連鎖といえば、子ども時代に虐待された人は、親になった時、自分の子どもを虐待する確率が高いということがよく例に出される。
このことから、連鎖は虐待だけに限ることと解されがちだが、そのことだけに留まらない。
ドロシー・ロー・ノルト博士が、「子どもはけなされて育つと、人をけなすようになる」「とげとげした家庭で育つと、子どもは乱暴になる」「広い心で接すれば、キレる子どもにはならない」などと述べているように、親の接し方が子どもの心に強く影響を与えていくものと考えられる。
子ども時代(幼児童期)は、性能も才能も混沌としてはっきりした形をしていない、いわゆる未分化の状態にある。つまり分別のつかない状態だ。
しつけでも遊び方でも親の関係のとり方が、そのままストレートに子どもの潜在意識の中にすり込まれていく。
一般的に、世代間連鎖は親子関係での現象とみられている。
けれども私は、親子ほどではないにしても、師弟関係でも起こる現象だと思う。
昔はスポーツに限らず、学校の授業でさえも体罰はあったし、教わる子どもたちもそれに慣れっこになっていた。
やがてその子どもたちが指導する立場になった時、同じように体罰を行うことが多かったのではないか。
虐待や体罰、いじめなどは、決してあってはならない。
このことは誰でも理解しているので普段は封じられている。
けれども、どうにも思い通りにならないような困惑した状況に追い込まれると、過去に体験したことがフラッシュバックして反応することになる。
子どもの頃、大人たちから寛大な気持ちで指導されながら育った人は、大らかな心を持つ人に成長する可能性が極めて高いことを、親や指導者はしっかりと肝に銘じたいものである。
ノースアジア大名誉教授 伊 藤 護 朗
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