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スポーツ心理学から学ぶ
子供たちの育成・指導


      

― 試合では不満大敵 

油断大敵という言葉がある。
失敗の原因の多くは、注意を怠ることによって起こることから、気持ちを緩めることは大敵という意味だ。
大事な場面では、特に心に留めなければならない言葉だが、勝負の大敵として、もう一つ付け加えたいのが″不満″である。
私の経験では、試合当日の試合前に部員を叱ったときは、だいたい結果は思わしくなかった。
「集合時間に遅刻した」「出発前にふざけて部室のガラスを割った」「試合に用具を忘れてきた」というような時、部員への不満が先に立って、ついつい大声で叱ってしまった。
しかし、覆水盆に返らずで、起こってしまったことにガミガミいったところでどうにもならない。
チーム全体が気まずい雰囲気になって、モチベーションが下がるだけであった。
それだったらと、できるだけ感情的にならずに注意し、速やかに不満の気持ちを忘れようと心掛けた。
事実この方が得策だったと確信している。
もちろんこれは試合当日に限ってのことだ。
普段もこのようなやり方だとけじめがなくなり、部員を甘やかすだけになってしまう。




データをとって検証したことではないが、試合中審判の判定を不服として執拗に抗議を続けるチームは、負けることが多いように感じている。
自軍に不利な判定をされると不満を持つのは当然のこと。
けれども、その感情にとらわれすぎると、戦う意欲が削がれ選手のパフォーマンスが低下しがちになる。
審判に責任転嫁しようとしたところで、覆らない判定は覆らない。
抗議が通らなかったら、潔く引き下がって次の展開に気持ちを向けるべきだろう。
人間の脳波は否定的な感情を持てば、ベータ波となって力が発揮しにくくなり、逆に肯定的な感情を持てば、アルファ波になって力が発揮しやすくなるといわれる。
不満や不平を最小限に抑え前向きに取り組む、これだけでも物事がかなり好転していくということを、信じてみてはどうでしょうか。


ノースアジア大名誉教授
伊 藤 護 朗


~ profile ~

伊藤 護朗(いとう ごろう)
秋田経大付高、秋田経法大付高(現 明桜高)の部長、監督として甲子園3回出場
秋田経法大野球部監督として全日本大学野球選手権大会(神宮)に2回出場
秋田県アマ野球連盟会長を経て2014年4月から秋田県野球協会 会長(現職)
北東北大学野球連盟顧問
ノースアジア大学法学部長、学生部長を歴任
平成8年ノースアジア大学教授就任
著書、論文、学会発表など研究業績多数
秋田市出身 71歳