― レディネスを忘れずに ―
発育期の子どもたちを、スポーツを通して正しく鍛錬していくためには、まず「レディネス」(訓練に対する心身の準備状態)を考慮して取り組むことが大切だ。
優秀なスポーツ選手になるには、敏捷性や持久力、筋力などの増強が不可欠だが、発育期にはこれらを同時に鍛えようとしても無理である。
一般的には、敏捷性は5~10歳、持久力は11~14歳の間に、そして筋力は15歳以降にレディネスができあがり、最も発達するといわれる。
したがって、この発達段階に応じて適時鍛錬し、その能力を伸ばしていくことが肝要だ。
子どもは大人を小さくしたものではない。
大人のスポーツ選手が行っている練習やトレーニングを、そのまま模倣して子どもたちにやらせることは、生後まもない赤ん坊を、早く歩かせようと訓練しているようなものといえよう。
このことと同時に、留意しなければならないのが障害の防止。
スポーツ障害の発生については、多くの場合、練習量の多さに起因している。
小・中学生段階での連続(集中)練習は2時間が限度であり、私の調査では、それを過ぎるとスポーツ外傷が急増する傾向がみられた。
練習が長くなる時は、途中で休憩を入れ、血糖値を上げるための甘いおやつや、発汗して失われる電解質(ナトリウム・カリウムなど)補給としてスポーツドリンク・生の果物などをとることが必要。
また、野球のピッチングやサッカーのキックなど強度な反復動作の練習は、その部位に過重な負担がかかるので、毎日実施するのではなく、発育に合わせて「二(日)勤一(日)休」などとすべきであろう。
アクシデントは忘れた頃に、とならないよう、常に細心の注意を払いたいものだ。
ノースアジア大名誉教授 伊 藤 護 朗
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