― 勝負の心、動じない心 ―
スポーツ交流会などで、小学生のプレーを見ていると、柔らかな可塑性(変形しやすい性質)を持っていることをつくづく感じる。
最初は周囲が気になり上手くプレーできないが、少し時間が経ってその場に馴染み始めると、ナイスプレーが続出するようになる。
このように力が出るようになるのは、リラックスしたからと考えられよう。
加えて、ほどよい緊張感と結果や成果を強く意識しなくてもいい交流会の雰囲気が、そうさせるとも推測される。
なぜなら、“ここ一番”という時に力を発揮するためには、やる気が強過ぎず、弱過ぎず、意識をその中間にコントロールしなければならない、と心理学的立場(逆U字型理論)からよくいわれるからだ。
しかしこのことは、頭では理解できても、容易にできるものではない。
勝負強い心とは、とりもなおさず「物おじしない心」「気後れしない心」のこと。
緊張する場面でも持てる力を発揮できる選手になるには、とにかく場数を多く踏んで、「場馴れ」できるようにすることがポイントになろう。
物おじや気後れをするのは、相手を過大評価することから起こることが多い。完璧な人物などいるはずがない。どんなに優秀な選手でも、失敗もするし弱点もあるのだ。
私の小学生の頃は、まだスポーツ少年団がなかったので、中学生時の記憶をたどってみれば、なにせ小規模校の野球部で、大規模校との対戦となれば、戦う前から委縮した。
ところが、2年生の時、若いバリバリの先生が監督になり、大規模校や強豪校と試合を組んでくれた。
おかげでチームには、みるみるうちに劣等感がなくなっていったことが思い出される。
“朱に交われば赤くなる”という言葉があるように、人は高いレベルのチームや人と交流するか否かで、それなりに変貌していく。
外界に対する知的関心が著しく高まる子ども(児童期)の時分から、物事に「動じない心」を培うことができるよう、さまざまなことを経験させるべきだろう。
ノースアジア大名誉教授 伊 藤 護 朗
|