― スポーツの賢脳効果 ―
スポーツを行えば、身体の成長や健康の維持・増進が促進されることは一般的に認識されている。
しかし、このほかにも脳が刺激され、賢脳(頭の回転が速くなる)効果があることは、あまり知られていないようだ。
例えば、野球でバッターは、相手投手が投げるボールの高低、球種、コース、速さなどを想定し、どの位置で構え、どんなタイミングで、いかにバットを出すかを考えて打つ。
そうすれば、大脳の働きのメカニズムである「思考」「意欲」「創造」「随意運動」「体性感覚」「知覚」「認識」「言語」「理解」「記憶」「判断」など、全体へ血液が流れ、大脳の機能が向上するという。
逆に、スポーツや運動をしないで“ガリ勉”を決め込み、机にへばりついても、限られた部分より刺激されず、大脳全体の活性化にはならない。
偏差値が重要視される時代。スポーツに取り組めば、勉強に支障が出るのでは、と心配される親の方も多いのではないか。
確かに成績のよい子どもに育てるには、幼いころから学習塾に通わせるなど、英才教育を行うことが近道であろう。
けれども、そのことが最善であるか否かは断言できない。
子ども時代に遊びやスポーツを活発にやった人と、そうでない人を比較すると、スポーツをやらなかった人は、行動面でも決断力でも不足するタイプが多く、さらに社会に出ても適応力なく、孤独で消極的という調査報告もある。
事実、あらゆる分野で大成した人、一流であるといわれる人の生き方を追ってみると、多忙の中にもゴルフやテニス、水泳などのスポーツに積極的に取り組んでいる場合が多い。
親も指導者も、そして子どもも、是非スポーツに賢脳効果があることを認識し、好きなスポーツに心置きなく取り組んでほしいと思う。
ノースアジア大名誉教授 伊 藤 護 朗
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