― 是は是、非は非で ―
子どものスポーツも注目度が高く、マスコミなどで大々的に報じられることが珍しくはない。
脚光を浴びると、選手や指導者は自信を深め、やる気がますます高まることになる。
けれども、勝つことや功名心に心を奪われて、過酷な練習や過激な叱責を繰り返していると、子どもは耐えきれなくなり、やがて心も体も折れてしまうのではないか。
そうなっては元も子もない。
それとは逆に、子どもをスター扱いにし、過剰に持てはやしたり、甘やかしたりでは、他人の気持ちを理解できない“自己中心”的な性格になりがちだ。
仲間と同調できない、他者の話に耳を傾けないでは、才能に恵まれても将来的に、大きく成長することは困難であるといえよう。
毎日の練習内容には、技術訓練だけでなく、グラウンドや体育館の整備、清掃、用具の整理・整頓、練習態度なども含まれる。
しかし、練習の中で同じことをしても、上手な子どもは甘やかされ、そうでない子どもはつらくあたられることはよくあるようだ。
例えば、掃除をふざけながらしても、約束ごとを守らない場合でも、はたから見れば、子どもに対する指導者の叱り方に、温度差を感じることがある。
叱られた本人は、その違いをもっと敏感に感じているはずだ。
かつて、私が現場で指導していたときのこと。
(子どもではない)ある部員から「監督はなぜ僕のことを叱らないのですか!下手だからですか!」と抗議されたことがある。
指導される人たちは、叱られないことでさえ、他と冷静に比較している。
選手との信頼感を深めるためにも、チームの結束力を高めるためにも、「是々非々」の精神を持って指導したいものだ。
ノースアジア大名誉教授 伊 藤 護 朗
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