「藤井黎來 投手 大曲工高」と呼ばれた瞬間、心の中でガッツポーズを繰り返した。
2017年10月26日、ドラフト会議当日は、朝からなんとなく落ち着かなかった。
会議が始まっても「本当に自分の名前が呼ばれるのか」、不安な気持ちでいっぱいだった。
各球団の1位指名選手が決まっていく中、練習をしていたが名前を呼ばれることはなく、時間ばかりが過ぎていく。
練習を終えて部室へ戻り、スマホで中継を見ていた次の瞬間、「広島東洋カープ 育成枠2位」として、名前を呼ばれた。
その後、待ち構えていた報道陣への怒涛(どとう)のような取材対応に追われ、一段落してようやく、阿部大樹監督へ報告に行くことができた。
阿部監督からは「おめでとう。(育成だから)焦らず、2年間努力しないといけないぞ」という祝福と、アドバイスの言葉をかけてもらった。
「自分でも(指名された)あの瞬間は、何が何だか分からない状況だった」と振り返る。
美郷町に生まれ、仙南東小―美郷中―大曲工高と野球を続け、常に目標は「プロ野球選手」だった。
“夢”を具現化した現在の心境をインタビューしてみた。
Q 指名があった瞬間は?
A 8球団から学校に調査書が届いたが、本当に指名されるのか、不安でした。
(ドラフト会議が)始まっても自分の名前がなかなか呼ばれず、半ば諦めかけた寸前で、ほっとしたのが本音です。
自分の実力からして下位指名か、育成だと思っていましたが、実際は不安で、それを打ち消すために練習をしていました。
正直なところ、進路は「プロ一本」で考えていたので、本当にうれしかったです。
「長い1日」でした。
Q どんな選手を目指す?
A 前田健太投手(広島―ドジャース)です。
柔軟性があり、一つ一つの球種の完成度が高いので、目標にしています。
自分は真っすぐだけでは勝負できないので、球の切れ、コントロールを磨いていかないと、通用しないと思っています。
対戦したいのは横浜DeNAの筒香選手です。日本を代表する打者なので、対戦できる日を楽しみにしています。
Q 将来の夢は?
A 1軍に上がって、2桁勝利をすることです。
その前に支配下選手になることが不可欠ですが、焦らず、死に物狂いで練習をして頑張りたい、と思っています。
Q 野球の魅力は?
A チームワークです。
野球は一人ではできないので、チーム全員で一つの目標に対して向かっていく姿こそが、魅力だと思っています。
大曲工に入学して、人として成長できたし、監督、トレーナーの下で体力、技術においても成長することができました。
いい仲間とも甲子園に出場することができたし、最高の3年間でした。
その甲子園では観衆の多さにびっくりしました。
直球にこだわって投球しましたが、花咲徳栄・高橋昂也投手(広島東洋カープ)を見てから、球の切れ、コントロールに磨きをかけないと、全国では通用しないことを学びました。
「甲子園は最高の舞台でした」
Q 感謝したい人は?
A たくさんいますが、両親には一番感謝しています。
毎日、弁当や洗濯、送り迎えをしてくれた両親へ、プロで活躍して親孝行をしたいです。
阿部監督とトレーナーにも感謝しています。
二人にはたくさんの指導や助言をしてもらいました。
そのおかげで、体も強化できたし、甲子園で試合もできました。
あとは、野球部の仲間や後輩にも感謝しています。
仲間たちには、自分たちの進む道を頑張ってほしいし、後輩たちには自分が頑張る姿を励みにしてもらって、努力して、甲子園出場を目指してほしいと思います。
Q 応援してくれる人たちへメッセージを
A 1日でも早く支配下選手になって、活躍している姿を見せたいです。
いつか「こまちスタジアム」で投げている姿を見せることができれば、最高ですね。
チームに貢献できる選手になりたいと思うので、応援をよろしくお願いします。
Q 3年間の高校野球生活は?
A 一番楽しかったことは、甲子園で投げることができたことです。
つらかったことは、冬場のトレーニングですね。
特に走り込みは「本当にきつかった」。
でも、その甲斐あって夏の県大会でノーヒットノーランを達成できました。
試合前から少しできそうな気がして、途中からは狙っていました(笑)。
達成時は「よっしゃー」と小さくガッツポーズをしたと思います。
自信になったし、いい思い出になりました。
最後の夏の県大会は、明桜に負けてしまい甲子園出場はなりませんでしたが、今でも雨で順延さえなかったら、勝っていた、と思います。
高校野球はずっと記憶に残る「大切な思い出」です。
Q 野球とは?
A 自分が生きていく中で「一番大切なもの」。
すべて野球を通じて学びました。
仲間もそうです。
これからは「仕事」にもなるので、あらためて、心して取り組んできます。
背番号「121」を背負い、1月から新人合同自主トレでプロとしてスタートを切った。
昨年12月の入団発表を終えて、より一層やる気が増した、と本人が言うとおり、厳しいプロという世界で“もがき”“苦しみ”ながら歩んでほしい。
その道の先には、支配下選手、さらには1軍という明るい未来が待っているはず。
故郷に錦を飾る日を待ちわびたい。
頑張れ!! 藤井 黎來
~ profile ~
藤井 黎來(ふじい れいら) 181センチ 86キロ 1999年9月17日 秋田県美郷町出身 美郷中―大曲工高 第99回全国高校野球選手権大会出場 |
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