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アナウンスを始めようと思ったきっかけですが、当時の上司からの誘いでした。 秋田銀行の野球部OBであり、監督の経験もあった上司でした。 なぜその方が私を誘ってくださったかというと、私自身、小さい頃から野球が大好きで、職場でもよく話していたことと、中学生の頃に放送委員会に入っていたことから、行事などで司会を務めた経験があったことも話していたので、「野球が好きで、放送にも携わったことがあるのであれば、アナウンスをやってみないか?」という経緯で、球場に足を運んでみました。 それまでは、秋田銀行に野球部があることは知っていましたが、試合を観戦したことはありませんでした。

始めてすぐの頃は、“台本がない”ことに苦労しました。 行事の司会などであれば台本があるのでそれを読むだけで良いのですが、試合は「生き物」なので、その時の展開に応じて選手交代があったりなど、試合の雰囲気を壊さずになおかつ、臨機応変な対応が求められるんです。 ドタバタしていたとしても、それを悟られないようにアナウンスをするのはもちろんですし、その当時は1人で1日3試合を担当することもあったので、それも大変でしたね。 「この日3試合あるから来て」と言われて行くとアナウンスは自分だけしかいなくて、教えてくれる人もいなかったので、不安に思いながらも、ただひたすらアナウンスをこなしていた感じでした。 試合が終わってから、選手に違った箇所を指摘されていましたね(笑) 今は全然そんなことはなく、新しい方には隣に1人付いて教えながらやっていますよ!(笑) あの時にだいぶ鍛えられたので、そのおかげで今の私がいると思っています!

社会人野球は、土日だけではなく平日も行われるので、仕事との両立はやっぱり大変ですよ。 やり始めた頃は私自身、お休みを割とコントロールしやすかったのですが、有り難いことに、だんだんと私も職場での地位が上がり、部下を抱える立場になってきて、簡単には休めなくなってきてしまったんですよね。 今は仙台にいるのでできていませんが、秋田にいた頃は、平日に出られない分、朝早く行って試合前の準備をしてから出勤するようにしていました。 私にできることはやらないといけないと思っていましたし、私が勝手にやっていたことだったので、苦ではなかったですよ。

アナウンスを担当していると、普段の社会生活ではお会いすることもないような方とお会いできたりするんですよね。 会社にいると、地位が高くて話すことさえできないような方ともフレンドリーに話せたりするんです。 「野球」という共通点で、幅広い年代の方との繋がりを持てるので、それはすごく素敵なことだと思っています。

東北大会でアナウンスをした時に、たまたまその試合に出場された選手とすれ違ったのですが、「とても気持ちの良いアナウンスで試合がやりやすかった。ありがとうございました」と言われたことがすごく嬉しかったです。 その日は1人で2試合くらい担当していたのでだいぶ疲れていたのですが、疲れも吹っ飛んで、『もっと頑張るぞ!』という気持ちになりました。 また、失敗してしまったエピソードもあるのですが、試合終了後の表彰式の前に、賞を取った選手の名前を書いた紙を渡されたんですね。 その紙を渡しに来た人は、紙を置いてすぐにグラウンドにいなくなり、表彰式を始める合図があったので始めたのですが、いざ受賞選手の名前を読み上げようとその紙を見たら、かなりの殴り書きな上に、フルネームで書いていなかったりして…(笑) 読めないので先に進めなくて会場をしーんとさせてしまい、皆の視線が痛かったです(笑) その事があってから表彰式は皆で協力してやる事に決めました。 自分のような苦い経験を若い子たちにさせないように、選手の名前はきれいにフルネームで、ルビをふってもらうように、アナウンス室にはだれか必ず付いているようにしました(笑) それから、試合中に選手を一気に大量に代えられるのって結構、大変なんですよ!(笑) なので、選手交代はせいぜい1回で3人くらいにして~と思います(笑)

私がアナウンスをやり始めた頃に比べると、社会もどんどん変わってきていて、土日でも休みではない会社も少なくないので、「土日なら出られるでしょ?」とはいかなくなりましたよね。 なので、大会を運営する側も選手も思うように集まることが少なくなりました。 「野球やるから仕事休ませて」なんて簡単に言えるような時代でもないですからね(笑) そういう意味で考えると、私は職場環境にはだいぶ恵まれてきていたと思いますね。 どこの支店にいても、上司や同僚が理解してくれていたおかげで、ここまでやってこられたと思っているので、本当に感謝しています。

県野球連盟は、組織的にはすごく良いんですよ。 男性だから、女性だからという理由で扱いが違うこともないんです。 社会的立場に関係なく、若い子でも皆同じ立場でばんばん意見を言いますし、これが会社だったら、すごく生産性を上げられるだろうな、と思いますね。 あとは、若手の育成にもっと力を入れてもらえたら、と思っています。

私にとって野球とは、『一番身近なもの』ですね。 父が野球好きだったので、私も小さい頃からテレビで野球をみるのを楽しみにしていましたし、社会人になってからも、ナイターの時間に合わせて帰宅したりしていました。 野球の経験こそありませんが、ずっと近くに当たり前のようにあったので、私はやっぱり野球が大好きです。 試合があるときは仙台から帰ってきているのですが、好きでやっていることですし、苦ではないですよ。 周りからは、「そこまでやるか?」と呆れられますが、野球に携わることができて幸せだなと思いますし、定年退職まで頑張るつもりですよ!(笑) 野球が私の楽しみでもあり、ストレス発散でもありますからね(笑)将来的には、東京ドームでアナウンスを担当してみたいです!!

≪文・写真:ボールパーク秋田編集部≫

~ profile ~

藤原 幸子(ふじわら さちこ)さん
秋田県秋田市出身
秋田銀行仙台泉中央支店 副長
秋田県野球連盟 理事