menu

スポーツ心理学から学ぶ
子供たちの育成・指導


      

― 指導者の「言葉かけ」 ―

スポーツの見どころの一つに、監督やコーチのパフォーマンスがある。
泰然自若に構えて、あまり指示や指令を出さない人、闘争心を前面に出し、叱咤(しった)激励する人、選手一人ひとりに穏やかにアドバイスする人などさまざまである。
勝利を目指して、個々の力やチームの力を最大限発揮させようと懸命に采配を振るう指導者の姿には、誰しもが感動し魅了される。
しかし時には、指導が空回りし、選手やチームが委縮したり、士気が沈滞したりする場合もある。
かつて、小学生の野球試合を観戦したときのこと。
観覧席のないグラウンドだったので、ベンチのすぐ後ろから監督や選手の様子をつぶさに目にすることができた。
ピンチの場面で、内野手の1人が捕球のタイミングが合わずトンネル。
すかさず監督から怒声が飛んだ。
けなげにも高い声で「はい」という返事。
攻守交代となってベンチに戻ると、その選手に再び「何やってんだ!」と厳しい叱責。
そのときの「はい」はかわいそうなほど弱々しかった。
やがて彼に打順が回ってきた。
打席に向かう彼への監督の指示は「エラーしたんだから(ヒットを)打たねばだめだ」であった。





勝負の世界は辛辣(しんらつ)である。
厳しくなければ、たくましくはなれない。
けれども、怠慢プレーと真剣にやってもできなかったプレーとは同じではない。
楽天球団のゼネラルマネージャーをしていたことがあるマーティー・キーナート氏から、「アメリカでは失敗した選手をけなすのではなく、『グッドトライ』(よい試みをした)と言葉をかけて励ます」と聞かされたことがある。
アメリカの物まねではないが、将来ある子どもたちに、伸び伸びと大らかにスポーツを楽しませたいものだ。


ノースアジア大名誉教授
伊 藤 護 朗


~ profile ~

伊藤 護朗(いとう ごろう)
秋田経大付高、秋田経法大付高(現 明桜高)の部長、監督として甲子園3回出場
秋田経法大野球部として全日本大学野球選手権大会(神宮)に2回出場
秋田県アマ野球連盟会長を経て2014年4月から秋田県野球協会 会長(現職)
北東北大学野球連盟顧問
ノースアジア大学法学部長、学生部長を歴任
平成8年ノースアジア大学教授就任
著書、論文、学会発表など研究業績多数
秋田市出身 71歳