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スポーツ心理学から学ぶ
子供たちの育成・指導


      

― カウンセリングの3つのキーワード ―

前回も触れたが、注意や忠告をしても選手の態度が改まらないような場合は、「1対1」でのカウンセリング(共に考え合う相談)形式の指導が有効であり、それを行うには「傾聴」「単純受容」「感情の反射」の3つが大きなポイント(ロジャーズ理論)といわれている。
「傾聴」とは、熱心な聴き手になって相手の話しに耳を傾けること。
自分の考えや判断を押し付けることなく、聴くことに専念すると、相手は自由な雰囲気を感じ話し出すといわれる。
「話す」は「放す」ともいわれるように、自らの内にあるものを外に向かって開放することにある。
耳を傾けることで問題を解決できるのか、と疑問視する人もいるだろう。
しかし、誰しもやる気が起こらない気分のときはあるはずだ。
そうしたとき、その心情を否定されないで、共感されると素直な気持ちになることは確かである。
次に「単純受容」とは、無条件に相手の感情や態度を理解しようとしていることを、簡単な言葉や動作(うなずき)で表現すること。
「うんうん」「なるほど」「そうなのか」など。
こうした表現によって、相手に「よく聴いているよ」という気持ちや態度が伝わり、無言の力強い支えになるという。
話し続ける過程は、心意の流れである。
これを断ち切らないでしまいまで聴き続けるためには、耳を傾けると同時に簡単な言葉や動作で相槌を打つことが大きな効果をもたらすと考えられよう。




そして「感情の反射」とは、選手が言葉や動作で表明した感情をそのまま受け取り、その表明した内容を理解した通り表現して返してやるというもの。
このことは、選手自身の心の状態を写してやることになり、「気づき」のきっかけとなろう。
例えば、「腹立たしくてムシャクシャしている」という人に、「そーか、腹立たしくて苛立っているのか…」と返すと、「いや、そんなに苛立っているという訳でもないが…」とトーンダウンすることが多い。人は他者のこと(欠点)はよく気づくが、自分のことはよく見えないものといわれる所以ではないか。
この3つのキーワードを念頭において行う指導は、相手に気づかせ、自らの力で前向きなってもらうための方法。
パワハラとか言葉の暴力などと指摘されたり、誤解されたりする心配は全くない。
子どももストレスを抱えている。
時には無気力、感情的、反抗的といった態度を示すことも当然あると思う。
そんな状況のときは、特にカウンセリング形式の指導法とることをすすめたい。

ノースアジア大名誉教授
伊 藤 護 朗


~ profile ~

伊藤 護朗(いとう ごろう)
秋田経大付高、秋田経法大付高(現 明桜高)の部長、監督として甲子園3回出場
秋田経法大野球部監督として全日本大学野球選手権大会(神宮)に2回出場
秋田県アマ野球連盟会長を経て2014年4月から秋田県野球協会 会長(現職)
北東北大学野球連盟顧問
ノースアジア大学法学部長、学生部長を歴任
平成8年ノースアジア大学教授就任
著書、論文、学会発表など研究業績多数
秋田市出身 71歳