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スポーツ心理学から学ぶ
子供たちの育成・指導


      

― 意識のコントロール ―

チャンスをいかにものにするか、ピンチを我慢強く凌げるか、が勝敗の大きなポイントになる。けれども、試合のムードに流されて漫然とプレーしたり、冷静さを見失ってみすみすチャンスを逃したり、自らピンチの傷口を広げて自滅するといったケースが極めて多い。
 たとえば、野球ではピンチになると、投手は投げ急いで単調になり打ち込まれることがしばしば見られる。中学生や高校生であれば、こうした場面では投球に間(間隔)をとるために、「走者に牽制球」「野手との声かけ」「深呼吸」「軸足にしっかり体重をかける投球動作」などの方法をとることを理解しているはずだ。しかし、ピンチになるとなかなか実行できない。このことは、普段から対応の仕方について徹底していないからではないか。
 ひたすら勝つことにこだわって技術に磨きをかけても、その力を発揮できなければ「宝の持ち腐れ」となる。そうならないために、チャンスやピンチの場面のほか、試合の過程(直前、序盤、中盤、終盤)などで、なすべきことや留意すべき基本事項を明確にし、体現できるよう訓練を積み重ねることによって、選手の心的対応力や集中力がより高まることになろう。



試合の流れの中で心掛けるべき事項として、その参考例を次に示してみる。(掲げる項目は3つ以内、多ければ意識が散漫になる)
「直前」→ リラックス(ストレッチ、深呼吸)
「序盤」→ 緊張感の緩和(大きな動作、大きな声かけ、ボールを凝視)
「中盤」→ 中だるみの防止(気持ちの引き締め、粘り抜く、各自のプレーの持ち味を出す)
「終盤」→ 追い込み(冷静にしぶとく、チーム一丸、最後まで食らいつく)
 はじめからメンタルの強い人は存在するが、大半はそうではない。やるべきことや心掛けるべきことを、実践を通して選手の潜在意識に刷り込まれるほど反復することによって、試合でも自動的に反応することが可能となる。
 メントレ指導は理屈通りにはいかない。正しいことを教えているつもりでも、受け入れられないことが多々ある。教えることは学ぶこと。選手だけでなく指導者自らも成長するという気持ちを持つことが必要だと思う。


ノースアジア大名誉教授
伊 藤 護 朗


~ profile ~

伊藤 護朗(いとう ごろう)
秋田経大付高、秋田経法大付高(現 明桜高)の部長、監督として甲子園3回出場
秋田経法大野球部監督として全日本大学野球選手権大会(神宮)に2回出場
秋田県アマ野球連盟会長を経て2014年4月から秋田県野球協会 会長(現職)
北東北大学野球連盟顧問
ノースアジア大学法学部長、学生部長を歴任
平成8年ノースアジア大学教授就任
著書、論文、学会発表など研究業績多数
秋田市出身 71歳